この記事では、MemoryFrame法を用いて、1000個以上の事項を記憶する方法を紹介します。
この方法を使えば、たくさんの事項を、体系立てて、かつ自由自在に引き出すことが可能になります。
クラスの名簿や歴史の暗記、国名や市町村や州名の完全な記憶はもちろん、
思考法やフレームワークなどを自在に使うための下準備としてもオススメです。
Contents
はじめに:47都道府県を、一つ残らず全て答えよ?
本題のMemoryFrame法に入る前に、一つ問題を出させてください。
「47都道府県を、一つ残らず全て答えよ。」
47都道府県は小学生の時に習う一般常識です。
しかし、その全てを残らず答えようと思うと、一筋縄には行きません。
最も簡単な「思いつくものから書いていく」方法は、一見すると問題なく答えられるように見えます。事実、最初の20個ぐらいまでなら、この方法で問題ないでしょう。
しかし、そこからが大変です。
思いついても思いついても、すでに書いた答えと被ってしまいます。
ようやく思いついたところで「あと10個足りない」と知り、心が折れます。
なんなら、よく見たら2回同じものを書いてたりするのを発見して落ち込むなど。

この方法では、集中力も無駄に使ってしまいます。
思いつくものから書いていく方法では、全てを網羅することは難しいでしょう。
そこで使うべきコツは、「地方」を経由するということです。
日本の47都道府県より大きい区分に、関東地方や近畿地方などの「地方」という区分があります。
都道府県を思い出すより先に、「地方」を思い出しておくことでミスを減らすのです。
まず最初に、北海道地方・東北地方・関東地方・中部地方・近畿地方・中国地方・四国地方・九州地方…と分割し、それぞれについて思い出す努力をします。
各地方について簡単な地図を書いてもいいですし、各県の連結を考えてもいいでしょう。

(ただし1つ足りない)
ここで大事なのは、「47都道府県を思い出す」という大変な問題が、「関東地方を思い出す」「四国地方を思い出す」などの小さい問題に分割できたということ。
それによって、全ての都道府県を思い出しやすくなったということです。
MemoryFrame法では、この「困難の分割」をより意識的に行います。
覚えたい膨大な知識を、都道府県における地方のような、より大きな分類にまとめます。
そうすることで、地方を親、都道府県を子とする親子関係が作れます。

その分類すらも膨大な場合は、より大きな分類へとまとめていきます。
この作業を繰り返せば、膨大な知識は、覚えたいテーマの単語1つにまとまります。

MemoryFrame法において重要なのは、この「まとめ方」を記憶する、ということです。
まとめ方が記憶できていれば、脳内に全体図を描くことができます。
あとはその図を脳内で見ながら、好きなところを引き出せばいいのです。
MemoryFrame法の手順
MemoryFrame法では以下のように作業を行います。
- 覚えたいものを集め、確定させる
- 覚えたいものをまとめる
- まとめをバラして覚える
それでは、都道府県の暗記を例にしながら、一つずつ見ていきましょう。
Step1:覚えたいものを集め、確定させる
まず、何を覚えたいのかをはっきりさせます。
覚えるものによっては、「どこまで覚えるか」がはっきりしないものもあります。
例えば、「全世界の国名」を覚える場合ですら、定義によって覚える国が変わってきます。
国連加盟国で言えば193ヶ国ですが、台湾やバチカン市国、パレスチナ国が入りません。
モンテビデオ条約における国家資格要件を満たす国ならば、203ヶ国になります。
こうした定義をはっきりさせておくことで、どこまで作業を進めればいいのか明確になりますし、自分が覚えていることと覚えていないことの境界がはっきりするのです。

Step2:覚えたいものをまとめる
次に、覚えたいものをまとめていきます。
作業としては、「同じ共通点を持つもの」を集め、その共通点で名付けていきます。
以下、この作業を「ラベルを貼る」と言います。
ただし、ラベルを貼る際にはいくつか注意点があります。
- ラベルは、他のラベルと被らないようにすること
- 1つのラベルに含んでいいのは、2~5個。(9個までは止むを得ない)
各注意点について、その理由をご説明します。
1つ目の注意点「ラベルは、他のラベルと被らないようにすること」
ラベルが他のラベルと被ってしまうと、今後ラベルから何かを思い出す際に、どちらを思い出していいのかわからなくなります。

このような状態は、記憶を自由自在に引き出す上で邪魔になってしまいます。
2つ目の注意点「1つのラベルに含んでいいのは、2~5個。(9個までは止むを得ない)
これは、人間が一度に記憶できる容量がその辺りだからです。
Nelson Cowan(2001)による研究で、人間が短期記憶で保持できる意味のまとまりは、3~5個が限界であると判明しました。
MemoryFrameを記憶する上でもこのような基準をできるだけ守ることで、なるべく無理なく記憶したいのです。
ただし、どうしても上手いラベルが見つからなくて、 6個以上になってしまうこともあります。その場合は、新たに自分でラベルを付けるか、そのまま覚えてしまいましょう。
ラベルに関して、すでにちょうどいい基準がある場合は、それを用いましょう。
例えば、都道府県のラベルとして、「地方」が丁度いいことを、我々は知っています。
一回当てはめてみて、ラベル数が多くなりそうな場合に、新たに名付ければいいのです。

6個以上のラベルを発見したら、2~5個にするべくラベルを追加します。
最後に、全てをまとめるラベルとして、覚えたいものの総称をつけます。

これで、MemoryFrame(記憶の枠組み)の完成です。
Step3:まとめをバラして覚える。
MemoryFrameが完成したら、今度はそれを覚えます。
まずは、MemoryFrameを、それぞれの親子関係にバラして捉えます。

学習の目標は2つです。
- 子ラベルから親ラベルを思い出せること
- 親ラベルから子ラベルを思い出せること
1から2へと進むことで、より負荷の少ない形で記憶することができます。
まず最初は、下から上へ思い出す練習をしましょう。

思い出せたらどんどんと左へ紙をずらし、同様に答えていきます。
思い出せなかったら答えを確認し、再度テストします。
一番最後のラベルまでこれを繰り返します。
最後まで思い出せたら、今度は上から下へ思い出していきます。
やることは先ほどと同様です。
思い出せたらどんどんと右へ紙をずらし、覚えていきます。

最後に、白紙を用意して、最初のラベルから全てを思い出せるか書き出して確認します。
覚え漏れがあれば覚えなおします。
これでMemoryFrameが頭の中に構築されました!お疲れ様です!
このステップは、学習ソフトAnkiの「穴埋めカード」を使うと、よりスムーズに進むことができます。(Ankiとは何かについては以下のリンクをご参照ください)

具体的には、親子関係を分割したあと、親子関係1つを暗記カード1枚に登録します。
暗記フィールドに、
{{c1::親ラベル}}-{{c2::子ラベル}}{{c2::子ラベル}}…
と入力することで、今の手続きを再現できます。
もっと極めたい人向け
このMemoryFrame法をもっと極めたい人向けに、いくつかのヒントを出したいと思います。
断定した表現ができないのは、私自身がまだこの学習法をやった時にどうなるのかについて、自信が持てないからです。でも、きっと役に立つはずです。
まとめ方を2つ以上にする
今回紹介した方法では、まとめたい物に対するまとめ方は1つだけでした。
しかし、これを2つ以上にすることもできます。
例えば、元素周期表の場合は、「族」で分けることもできますし、「周期」で分けることもできます。
これらを両方とも身につけることで、様々な状況に対応する記憶を構築することができると思われます。
さらに高次のラベルを用意する
今後さまざまな物を覚えていく上で、汎用的なラベルが必要になる場合があります。
その時は、ありとあらゆる情報を整理してきた、強力な基準を借用したいものです。
現在私の中で有力なのが、wikipedia-学問の一覧と、日本十進分類法です。
これらは、様々な情報に対応するべく進化してきた分類基準であるため、一定程度信用してもいいのではないかとも思っています。
ただし、ライフスタイルなどのような、広範な分野を集めた学際的なものの処理をどうするかについて、確定的な結論を得られていません。
もしその辺りを柔軟に解決できた方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。
終わりに:何のために覚えるのか
Googleで検索すればいい時代に、わざわざ本を脳に入れなくてもいいのではないか。
その指摘は半分当たっていて、半分間違っていると思います。
確かに、情報を確認するだけならGoogleで検索すれば事足りるかもしれません。
Googleがアルゴリズム改良に勤しんでいるおかげで、信頼性の高いページが表示されるようにもなりました。
しかし、我々が記憶を外部に預けた時、その記憶から生まれたはずの創造性を失います。
我々の創造性とは、外部に預けていては決して混ざり合うことのない情報や経験が、自分の体の中に取り込まれ、融合されることで生まれます。
ですから、新たな発想をうむためには、その人しかやっていない特別な組み合わせで、経験や知識を覚えておく必要があるのです。
このMemoryFrame法によってもたらされた記憶が、あなたを助け、創造の出発点となることを願っています。それでは。