雑記

twitterでの論争を整理するマトリックス

きのこ派とたけのこ派の引き合い。

twitterでの論争を、マトリックスを使って整理する方法についてお話しします。

この記事、炎上しないことを祈るばかりだな!

はじめに:twitterで議論は難しい

twitterを長いこと見つめていると、「またこの流れか…」って思うことがあります。

それは例えば、こんな流れ。

  1. 不祥事とかのニュースが報じられる
  2. そのニュースについて、色んな人がツイートで批判する
  3. そのツイートについて、色んな人が引用リツイートやリプで反論する

フォロワーが多い著名人アカウントなんかもツイートして、そのリプには地獄のような反論が来たりしますよね。

フォロワーが少なくても500リツイートぐらいされれば、10回ぐらいは反論の引用リツイートが来ます。

あくまで個人的な体感値だけどな

こうした反論にビビった人はツイートを削除し、逆にリプで応戦する人はその様子まで拡散されて余計に炎上が燃え広がるわけです。

this is 阿鼻叫喚。

それでも、この流れを何回もみたことで、少しずつ分かってきたことがあります。

それは、

  • 「知識人」すら、140文字以内では自分の意見を伝えきれない
  • 感情が先走っているのか、ツイートもろくに読まずに反論している
  • 相手は自分よりバカだと思いこんでいる
  • 定義がズレているので、そもそも議論にならない

ある意味では仕方がないのかもしれません。

正確な議論をするには、1ツイート140文字しか書けないtwitterでは無理でしょう。

議論を適切にすすめるには、

  • 用語の定義をはっきりさせ
  • お互いの主張を尊重した上で
  • より良い結論に達するべく建設的な批判・構築を行う必要があります。

多分、用語の定義をはっきりさせるだけで、10ツイートぐらい必要です。
あらかた議論が終わる頃には、100ツイートは行く気がします。

100ツイートとか、もはやtwitterでやるなよ

ですので、twitterでの論争を「議論」と呼ぶのは無理があります。

残念ながら、別の捉え方をする必要があるでしょう。

私の提唱する捉え方は、「世論の誘導合戦」です。

誘導合戦における「論争軸」

つなひきをしている2人

何か論争が発生すると、発言者は世論を自分の方向へ引っ張ります。
もしそれに反論する人がいた場合、いわば綱引きのような状態になります。

例えば、「きのこ・たけのこ戦争」の場合は、

きのこ派とたけのこ派の引き合い。

きのこ派は「きのこの山の方が優れている」と主張し、たけのこ派は「たけのこの里の方が優れている」と主張します。

この双方の意見は、両立できません。
きのこの山の方が優れている時、同時にたけのこの里の方が優れている…ということは起きえないのです。
どちらか一方しか、勝者になることはできません。

このような、「両立できない双方の意見」を、論争軸と呼んでみたいと思います。

「きのこ・たけのこ戦争」は、「きのこ派-たけのこ派」を1つの論争軸にもつ問題である、と言えるでしょう。

きのこ派とたけのこ派の論争軸

このような、論争軸が1つの問題は、対立構造が分かりやすく盛り上がりやすいです。

「敵が誰なのか」がはっきりしていて、主張を明確にできるからです。

しかし、現実に発生する問題の多くは、1つの論争軸だけでは対応できません。

論争軸を2つ以上に増やすことで、より正確に捉える必要があります。

2つの論争軸:論争整理マトリックス

twitterのお決まりの流れを、架空の具体例で再現するぞ

例えば、次のようなツイートが投下されたとします。

たけのこの里を、しかも学校の遠足に持っていくなんて本当に信じられない!
どんな教育を受けてきたの!!!恥ずかしくないのかしら!!!

このツイートは一瞬で3万RTされました。
賛同するツイートもたくさんありましたが、同時に、反論のリプや引用リツイートも大量発生しました。

例えばこんな感じ。

  • 遠足で食うたけのこの里の美味しさを知らねえのかコイツは。
  • きのこ派は、友達が少ねえからな。
  • 遠足でお菓子を分け与える友達も、一人もいねえんだぜ!
  • ジメジメしたところで腐ってろ
確かにいつも、こんな感じに過激なヤツがいるな

twitterでは、最初の反論はものすごく過激です。
その過激さに対して難色を示す形で、次のような「穏健派」が出てきます。

たけのこの里は好きだし、人それぞれ好みがあると思うんだけど、
遠足にお菓子を持ってくのはどうかなって思う。

「遠足で食ってもいいだろ」だけ言えばいいのに、きのこ-たけのこ戦争にまで着火してて草生える。(ちなみにきのこ派です)

もはやこうなっては、「きのこ-たけのこ」という論争軸1つでは説明できません。
もう1つの論争軸、「遠足にお菓子を持っていくのは よい-悪い」という論争軸が必要になるのです。

現在の状況を図表にすると、こうなります。

2軸マトリックスの基本的な例。

元のツイートは右下の「きのこ派,悪い」に位置します。たけのこの里を攻撃していましたし、遠足に持っていくことも批判していたためです。

それに対する過激な反論は、元ツイートから一番遠い、左上の「たけのこ派,良い」に位置します。

過激な反論に対してさらに反論を行った穏健派は、左下と右上に位置します。
左下は、たけのこ派だけど、遠足にお菓子を持っていくのだけは反対なので「たけのこ派,悪い」。
右上は、遠足には持っていくのはいいけど、きのこ派なので「きのこ派,良い」です。

ほとんどの場合、最も過激な反論は、反論相手の真反対に位置します。
この例でも、最も過激な反論は左上から右下に向けて行われました。

対角線にでっかく「反論」って書いてあるな

しかし、真反対にいるのは右上と左下も同じです。
ニュースが報じられてしばらくたつと、今度は右上と左下で批判しあっているのを見ることができます。

2軸マトリクスにおける、場外乱闘
巻き込みリプで争ってるヤツらにこのタイプが多いな

これが論争整理マトリックスです。
無秩序にみえる不毛なtwitterバトルを、より整理した形で見通すことができます。

でも実際、どうやってマトリックスを作るんだろうか

論争整理マトリックスの作り方

論争整理マトリックスを作るにあたって最も重要なのは、「論争軸」をどう決めるかです。

論争軸は、少なくとも以下の条件を満たさなければなりません。

  • 軸の一方ともう一方の意見が、両立不可能であること
  • それぞれの論争軸が、独立していること

両立不可能であることは、綱引きの図で説明した通りです。
両立が可能であれば、そもそも論争にはなりません。

問題となるのは、2つ目の条件「独立していること」です。
この場合の「独立」は、「その論争軸が別の論争軸に影響を与えない」ことを意味します。

先ほどの「遠足に持っていくたけのこの里」論争では、2つの論争軸は独立していました。
「きのこ派か、たけのこ派か」という話と、「遠足におやつを持っていくか否か」の話は、お互いが影響しない、全く別の話だからです。
その証拠に、マトリックスで分けられる4パターン全てに、別々の意見が収まっています。

もし論争軸が独立していない場合、4パターン全てに意見を入れることができません。

試しに、悪い例を作ってみましょう。
「遠足にお菓子を持っていくのは よい-悪い」という評価軸の代わりに、「お菓子が好き-嫌い」という評価軸を入れてみます。

左上は「たけのこ派,お菓子が好き」なので、「お菓子が好きな、たけのこ派」であることがわかります。
右上は「きのこ派,お菓子が好き」なので、「お菓子が好きな、きのこ派」であることがわかります。

しかし、左下と右下はなんでしょうか。
例えば左下は、「お菓子が嫌いな、たけのこ派」を意味します。
でもそんな人、果たして存在するのでしょうか?
お菓子が嫌いだったら、そもそもたけのこ派とかきのこ派とか関係ないでしょう。
よってそのような意見は存在せず、マトリックス上は空欄になります。

このような空欄は、「きのこ派?たけのこ派?」という質問に、「お菓子が好きである」という前提が多少なりとも入っているため、発生したものです。
そもそも、きのこの山もたけのこの里も、お菓子に含まれますからね。
つまり、「きのこ-たけのこ」論争軸と、「お菓子好き-嫌い」論争軸は独立していなかったのです。

論争軸が独立しているか確かめるためには、今やったような方法をとると良いです。
試しにマトリックスを作ってみて、その全てに筋の通った意見が作れるかを試します。
作れている場合はおおよそ独立していると思っていいですし、作れない場合は間違いなく独立していません。

独立した論争軸がはっきりすれば、論争の状況を明確に把握することができるはずです。

あとがきの諸々:論争整理マトリックスの効果と展望

この論争整理マトリックスは、「論点の分解」を「数学のベクトル分解」のアナロジーとしてみなして設計されました。
「独立」という言葉も、ベクトルの1次独立と共通させました。
ある種、グラフという数学の表記法を借りることで、論争を整理する有用な手段を手に入れられたのだと思います。

もちろんベクトルなので、この論争軸を3軸、4軸…と増やしていくことも可能です。
しかし、お互いに全く独立しない論争軸を設定するのは難しく、検証のために作らないといけない意見の数も爆発的に増えてしまいます。
ですので、2軸、多くても3軸ぐらいまでが、実用に耐えるのかなと思います。


また、これは実際に作ってみると体感しますが、このマトリックスを作ると、多様な意見に触れることができ、思わぬ発見をすることができます。
自分が論争上どの位置にいるのか分かるということは、自分から見て分かりづらい位置の人々について、想いをはせることに他なりません。
特に、自分の対角線上にいる人々の意見を、筋の通った形で代弁する行為は、心理的な抵抗が大きいものです。でもそれは、相手を理解するためには必要な行為なのだと思います。

「クソリプ」と呼ばれる発言についても、そう見えない発言についても、このマトリックス上は同じ価値を持ちます。
そのような性質から再発見されるのは、「クソリプ」が「クソリプ」かどうかは、その人がどの論争軸を重視しているかによります。
万人にとってクソリプなリプは存在しない、ということです。


これは技術ある人に丸投げしたいのですが、このマトリックスを発展させれば、世論動向の可視化ができる気がします。
影響力(ツイッターのリツイート数かフォロワー数)とその人の意見ポジションを分析し、ベクトルとして反映させていけば、twitter上でどの世論が支配的なのかが分かる…気がしています。
技術的障壁が色々ある気もしますが、私はまだできません。任せます。


最後に、良いっぽいことをいって終わりにしたいと思います。

twitterはその性質上、思想で殴り合うことが多いです。
でももし、議論が成立したとしたならそれは奇跡だと思います。
そういった奇跡を、これからも大切にしたいと思います。

こんなこと言っても魔除けにもならねえ!

それではまた。