今回は、あらゆる目標達成に使えるフレームワーク「ACTIUM」を作りました。
このフレームワーク「ACTIUM」は、以下のことができます。
- あらゆる目標達成とそれに向けた行動を表記する
- 既存のビジネスフレームワークのバグを修正する
- 分野的にかけ離れたアイデアを一つにまとめる
- 複数目標,複数人のプロジェクトで、円滑に議論を進める
…などです。これらは効果のほんの一部分にすぎません。
「ACTIUM」は、個人または組織が目標達成のためにとる行動について、理論的な基礎を与えるものです。
そのため、それ自体は素朴であっても、使い尽くすことのない開発の可能性を残しています。
応用範囲が非常に広いので、全てを書くことは到底かないませんが、
中心的な概念から実際の使い方まで、基本を中心にお伝えします。

Contents
ACTIUMの基本概念
最初に、「ACTIUM」を支える基本的な概念を紹介します。
これらの概念は、「そもそも私たちはどうやって目標を設定し、目標を達成するのか」という根源的な問いから出発し、実際のケースと照らし合わせながら組み立てたものです。
抽象的な話が多くなりますが、それと対応する具体例は、あなたの身の回りにあふれているはずです。
どうぞ身構えずに、お読みいただければ幸いです。
そもそも、目標達成とは何か:「現状」「理想」「行動」
ACTIUMを説明する上で、最も考えなければならない問い。それは、
「そもそも、目標達成とは何か」ということです。
「目標」という言葉の響きから想像されるのは、やはり大きめの目標でしょうか。
例えば「サッカー選手になる」や「世界征服」のような遠大なもの、もしくは、「幸せな家庭を築く」や「自分らしく生きる」などの、定義があいまいなものもあるでしょう。
でも、実は小さい目標だっていいのです。
例えば、「カップラーメンを作って食う」とか、「電車に間に合うように駅まで走る」でもいいのです。
私たちにとっては当たり前の行動ですが、それらは実は全て「目標達成」です。
こうしてみると、私たちの行動にはいくつかの共通点があることに気づきます。
- 理想とする状況がある
- 現状は、理想ではない
- 現状を理想に近づけるために行動する
具体的にいうなら、
- 「カップラーメンを食べたい」 = 理想の状況
- 「調理前のカップラーメンはある。でもそのままでは食えない」 = 理想と違う現状
- 「カップラーメンを食べるために、お湯を入れて3分待つ」 = 現状を理想に近づけるための行動
ということです。
つまり目標達成とは、「理想を設定し、現状を認識し、現状を理想に近づけるための行動をとること」です。

この、「現状」「理想」「行動」の3つの構造が、ACTIUMにおける基礎になります。
行動とは交換である
次に考えてみたいのは、「現状」と「理想」の差についてです。
理想を達成した時、現状と比べて何が増えたでしょうか?
逆に、理想を達成した時、現状と比べて何を失ったのでしょうか?
例えば、高1の時に赤点だった生徒が、3年の受験勉強の結果、東大に合格したとしましょう。
「現状」は高1の時の自分、「理想」は東大合格後の自分になります。
この時、「理想」は「現状」と比べて何が増えたかといえば、
東大合格という「信用」や英数国理社に関する「知識・能力」でしょう。
教材や勉強道具などの「道具」も増えたと言えます。
対して、「理想」が「現状」と比べて何を失ったかといえば、
受験に費やした3年間という「時間」や、教材や予備校に費やした「お金」でしょう。
理想を達成したとはいえ、これらは帰ってくることがありません。
つまり、「受験に挑む」という行動は、
- 現在持っている「時間」「お金」と引き換えに、
- 「信用」「知識」「能力」「道具」を手に入れる
一種の「交換」だといえます。

他にも、「物を買う」という行動は、代金である「お金」や買うのにかかった「時間」を引き換えに、欲しかった「道具」を手に入れる交換です。
コンビニバイトで研修生として働くという行動は、「時間」を引き換えに、バイトとしての「能力」と時給という「お金」を手に入れる交換です。
研修生じゃなくなり時給が上がったら、働く「時間」と研修で身につけた「能力」を引き換えに、時給という「お金」を手に入れる交換になります。
人間は、時間を使わなければ行動できません。
ですので、その行動によって何を得るにしても、己の時間と「交換」することでそれを得ているのです。
つまり、人間の行動とは、必ず「交換」である、といえます。
6つの資源:A(能力),C(信用),T(時間),I(情報),U(道具),M(お金)
さて、ここで「資源」という定義を導入したいと思います。
資源とは、人間が何かの目的のために、使えるもの・使いたいものを言います。
先ほどでいう、「能力」「信用」「時間」「情報」「道具」「お金」は、全て資源です。
そして、目標達成の点からみると、この世の全ての資源は、先に挙げた6種類に分類されます。
下の図をご覧ください。

「ヒトーモノ」軸、「自分ー他人」軸で分類した時、それぞれが各スペースに配置されているのが分かります。
配置の根拠としては、
- 能力は、自分が持っているもので、ヒトの身につく
- 情報・道具は、自分が持っているものだが、自分の体の外にあるモノである
- 信用は、ヒトの身につくものであるが、他人からの評価によって決まる
- お金は、モノを手に入れられるが、あくまで他人と交換しなければならない
- 時間はヒトにもモノにも、自分にも他人にも平等に流れるので中立的
ということになります。
全ての資源は、「ヒトーモノ」軸および「自分ー他人」軸によって分類でき、仮に分類できない場合は中立的な位置に置かれます。
よって、目標達成に関する資源は、以上の6つに分類できるわけです。
情報と道具が同じ区分に入っているため、「自分・モノ」であるというだけでは、情報か道具か区別がつきません。
これらは、「動的か静的か」で区分できます。
つまり、動かして使うのが道具、そのままで使うのが情報です。
例えば、取扱説明書はそのままで使うので情報です。
トンカチは手で動かして使うので道具になります。
本はそのまま読めば情報ですが、本の角で人を殴った場合は道具になります。
また、ソースコードのような物質的形態を持たないものでも、動かして使うので道具になります。
もっとも、情報・道具の区分は管理上使うというだけなので、「動的・静的」基準によって厳密に振り分ける必要もありません。フィーリングでOKです。
そして、これらを英語表記にするとこうなります。

ACTIUMという名前は、これら資源の頭字語です。
「現状」「理想」「行動」のACTIUM表記
さて、目標達成とは「現状」を「行動」で「理想」に変える行為だと述べました。
また、目標達成に関わる資源は、ACTIUMの6資源に分類されることも述べました。

つまり、この2つの性質を合わせれば、
「現状」「行動」「理想」をACTIUMで表記できる、ということです。

私たちは、「現状」で保有しているACTIUMを使って「行動」し、「理想」のACTIUMを手に入れます。
これは、目標達成に関わる全ての行動・状態に言えることです。
例えば、先ほどの「カップラーメンを作る」をACTIUMで表記するなら、こうなります。

「理想」状態にて得たいACTIUMは、「U:できたてのカップラーメン」のみです。
しかしそのためには、「U:調理前のカップラーメン」はもちろん、「A:(作り方の)文章を読む能力」「A:お湯をくむ能力」「A:(カップラーメンの)フタを開ける能力」が必要ですし、「I:カップラーメンの作り方の情報」と「T:3分30秒(お湯を注ぐまでの30秒と、待ち時間の3分)」も必要です。
それらの能力が「現状」にあってようやく、「調理」という「行動」をとることができます。
また、「調理」の右側には各種能力がA’の形で表されています。
これは、1回調理をしたことで、それぞれの能力が上達したことを意味します。
また、「I;カップラーメンの作り方」は、変わらず残ります。この情報は変わらないからです。
確かにその通りです。
この例のように、「行動」が1つしかないような場合は、ただただ実行すれば目標を達成できます。
ですので、ACTIUMで表記するまでもありません。
しかし、ACTIUMが真価を発揮するのは、事態がもっと複雑になった時です。
つまり、
- 目標がもっと大きい
- 目標が複数存在する
- 時と場合によって取る行動が変わる
- 関わる人数が多い
などです。
このような事態では、ACTIUMを用いて管理することに大きなメリットがあります。
ACTIUMを組み合わせる
ここまでは、目標達成に関する基本的な概念を確認してきました。
むしろここからが本題です。
今まであげた基本的な概念を組み合わせることで、実用的な戦略を立てることができます。
行動を積み重ねる
今まで、現状と理想と行動がそれぞれ1つずつの、非常に簡単な構造について述べました。
しかしこれは、ACTIUMにおける基本的な構造にすぎません。
この構造は積み重ねることができます。

これは、先ほどの構造を直列につないだものです。
青→ピンク→黄色→緑→赤…と、ACTIUMの流れが作られています。
こうすることで、「1つずつの行動を積み重ねて理想に近づく」計画を立てることができます。
行動を分岐させる
直列の次は並列です。
1つのACTIUM状況から、図のように複数の行動を考えることもできます。

青の状態になれば、ピンク・黄色・緑に至る3つの行動を取ることができます。
「この資源があれば色んなことができる」という状況を示すのに最適です。
理想から逆算する
これまでは、現状から「右向きに」ACTIUMを設定してきました。
しかしもちろん、この逆方向、理想から「左向きに」ACTIUMを設定することもできます。

今までの「左向き」の設定はいわゆる「ボトムアップ」でしたが、今回の「右向き」の設定はいわゆる「トップダウン」の動きになります。
「トップダウン」の動きをする場合に考えなければならないのは、
理想が一つだとしても、それに対応する行動はだいたい複数存在するということです。
一つだけ行動逆算で「理想の一つ前」を出したとしても、それは候補にすぎません。
満足することなく、複数の選択肢を出していくことが重要です。
理想を分割する
同じ「トップダウン」型ではありますが、「理想を分割する」方法は少し特殊です。
今までと違い、「行動」を使わず、状況をそのまま分割します。

例えば、「100km走る」という理想を、「10km走る」という理想に分割します。
これは数値による分割であり、もっとも行いやすい分割の方法です。
また、「スーパースターになる」という理想を、「芸能事務所に入る」という理想に分割しても良いでしょう。
これは言葉による分割であり、深く考えて行えば、数値による分割よりも強力です。
これらの分割にも、直列と並列が存在します。
直列は「この順番通りに進む」タイプ、並列は「どの順番で達成してもいい」タイプのものです。


こうした分割は、理想が大きすぎてどんな行動をとっていいかわからない時に行われます。
理想をある程度小さいものに分割することで、自分がどのような行動を取ればいいのか分かりやすくなります。
いわゆる、デカルトの「困難は分割せよ」にのっとったものです。
しかし、この理想の分割には、注意すべきエラーが存在します。
それは、行動を間に挟んだ時と比べて、因果関係が伴いにくく、計画は立てたものの実際にはできない、いわゆる机上の空論になりやすいのです。
理想の分割が引き起こすエラーは以下の通りです。
- 分割した理想は、実は元の理想と関係がない
- 元の理想よりも分割した理想の方が達成が困難
- 分割した理想と、元の理想をつなぐ行動がない
こうしたエラーは、自身の知識不足に警戒したり、なるべく悲観的に考えることである程度回避できます。
しかし、現実の問題として「やってみないとわからない」ことが大部分です。
考えずにやってみて、エラーにぶち当たってから考えるというのも、一つの方法なのかなとも思います。
ACTIUMの全体図
これまで紹介したACTIUMの状況と行動の組み合わせを用いると、このような図ができます。

今後の増補予定
本来ならば、この後に「実際の作り方」を載せるべきなのでしょうが、
応用範囲が広すぎるために、この記事では書ききれません。
ですので今後、この記事を中心に、いくつかの記事を増補していきたいと思います。
今後の増補予定はこちら。
・現状と理想をどのようにACTIUMに書き込むか
・行動カードをどのように思いつくか
・適切な目標分割と数値のパラドックス
・ACTIUMにおけるビジネスフレームワークの解釈・修正
・PDCA vs OODA論争に決着をつける
・SWOTの導入
・状況による分岐(確率表示,状況表示)
・組織としての学習-言語化